
「退職するときに有給消化すると、もらえる給料が減らされるのでは?」と不安に感じている方。
結論からいえば、退職時の有給消化だからという理由で、有給の給料が減らされることはありません。
ただし、有給だと支給されない「手当」があったりして、正当な計算方法に基づいていても金額が少なくなる場合はあります。
そこで本記事では、退職時に消化する有給の基本的なルールと、給料が「減ったように見える」4つのケースを解説していきます。
なお、違法ですが、「不当に」給料を減らそうとしてくる会社もあるのは事実で、実際に「有給休暇の金額を不当に6割にされた」という体験談もあります。
もちろんこのようなケースもちゃんと防げますから、会社から不当に有給の給料を減らされそうな場合、対策としてできることもあわせて解説しています。
退職時の有給消化でもらえる給料が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】
- 「退職時の有給消化だから」という理由で給料が減らされることは基本的にない
- ただし、正規のルールに沿って計算した結果、いつもより少なくなることはある
- 【有給金額が少なく感じられる4つのケース】
- ケース4の「会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる」だけは対応が必要
- 会社の有給のルールや今持っている有給日数を確認し、担当部署に金額を確認し、やり取りも証拠として残しておくこと
- 不当な有給の減額・支払い拒否があった場合、法的な根拠に基づいて交渉し、正当な金額を受け取れるようにしてくれる弁護士の退職代行への依頼もおすすめ
なお、退職時の有給消化について、基本的なルールや手続きは以下の記事で解説しています。ぜひあわせてご覧ください。
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1.退職時の有給消化だからといって給料が減ることはない

退職時に有給消化したからといって、給料の金額が減ることはありません。
少なくとも、あなたが本来受け取れるはずの給料が「有給だから」という理由で不当に減らされることはない(少なくともそれは違法)ので、まずはご安心ください。
厚生労働省は有給の給料について、「普通に働いた時と同じ金額がもらえる」というルールを定めています。
一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇のことで、「有給」で休むことができる、すなわち取得しても賃金が減額されない休暇のことです。
引用:厚生労働省
もちろんこの原則は、退職時であろうが関係ありません。
ただし、正当な計算方法に基づいて計算した結果、いつもより給料が少なくなること自体はあり得ます。
代表的なものとして、通勤手当(交通費)のように、実費(実際にかかった分だけ)支給の手当がカットされるケースがあります。
有給で休んでいるなら当然交通費は発生していませんから、カットされるわけです。
次の項目からは、このように「不当ではない」ものも含め、有給の給料が少なくなる仕組み・ケースを解説していきます。
2.退職時の有給消化で給料が少なく感じられる4つのケース

「退職時に有給消化だから」という理由で有給の給料が減ることはありませんが、
正当なルールや計算方法のもとで金額が少なくなるケースはあります。
有給の給料が少なくなる仕組みとしては、主に以下のようなものがあります。
【給料が少なく感じられる4つのケース】
- 【ケース①】有給だと支払われない手当がある
- 【ケース②】有給日数を勘違いしている
- 【ケース③】有給の計算方法が特殊な場合
- 【ケース④】会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる
最後の「会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる」ケースを除くと、後の3つは制度上仕方がなかったり、勘違いが元になって金額が少なくなっています。
制度上仕方がないケースなどは、「そういうもの」と把握してそのまま受け取る。
一方で、不当に減らされそうになったら、それを防ぐための対策が必要になります。
どの理由で有給の給料が減っているかによって対処の仕方が変わってくるので、必ずチェックするようにしてください。
1)【ケース①】有給だと支払われない「手当」がある
給料には、基本給といわれる給料のベースとなるお金のほかに、別途「手当」がついている方が多いでしょう。
この「手当」は種類によって、有給の給料に含まれるものと含まれないものがあります。
具体的には、毎月同じ金額が固定でもらえる「固定手当」は有給に含まれる一方、月ごとに支払いの有無や金額が変わる「変動手当」は有給に含まれないことが多いです。

【2種類の「手当」 についての例】
| 手当の種類 | 手当の内容 | 支給時期・金額 | 具体例 |
|---|---|---|---|
| 固定手当 (有給でも支払われる) |
労働者の肩書や能力や居住環境に応じて支給される | 毎月・固定額 | ・役職手当 ・資格手当 ・技能手当 ・家族手当 ・住宅手当 ・勤続手当 ・職務手当 ・通勤手当(固定で支給されている場合) |
| 変動手当 (有給だと支払われない) |
労働者の「勤務日数」「勤務時間」「その時限りの特別な行動」などに応じて支給される | 月によって支払うかどうか変わる・金額も上下する | ・残業手当 ・休日出勤手当 ・深夜勤務手当 ・通勤手当(実費精算型の場合) |
例えば、6月の給料が33万円(基本給27万円+資格手当1万円+残業手当5万円)で、7月いっぱい有給を使ってから退職するとします。
有給消化時は、実際に残業したわけではないので、残業手当(変動手当)は支給されません。
結果、有給の給料は先述の33万円から残業手当5万円を引いた28万円になり、6月給料の33万円より安くなります。
このような仕組みで有給に変動手当が含まれなかった分、「給料が減った」ように見えるというわけです。
固定手当・変動手当にはさまざまなタイプがありますが、どの手当を有給計算に含めるのかは会社によってルールが違います。
正確に知りたい方は、就業規則を確認するか、有給消化の担当部署(担当者)に聞いてみてください。
2)【ケース②】有給日数を勘違いしている
あなたが持っている有給の日数を勘違いしており、金額は間違っていないのに減ったように感じてしまうケースも考えられます。
具体的には以下のような状況で、有給の日数を勘違いしてしていたという例が少なくありません。
【有給日数を勘違いした例】
- 年末年始やお盆が公休だと思っていたが、有給消化で休みになるルールだった
- 2年以上前に付与された有給が失効していた
- 体調不良で数日有給を使っていたのを忘れていた
こういった勘違いがないよう、自分の有給休暇がどれくらい残っているのか、いつ消化したのかは正確に把握しておく必要があります。
3)【ケース③】有給の計算方法が特殊な場合
給料の計算方法によっては、有給の金額が通常時の給料よりも少なくなる可能性があります。
というのも、一般的には「通常の賃金」といわれる、通常時の給料をそのまま有給とする計算方法が使われています。
ですが、「通常の賃金」の方法で金額を出すのが難しい会社では、「平均賃金」または「標準報酬日額」という別の計算方法を採用しています。
これらの計算方法が使われている場合は、有給でもらえる額が少なくなる可能性があるのです。
特殊な計算方法で有給の給料が計算される仕事は、以下のようなものが多いです。
【特殊な計算方法になりやすい職業】
- 「平均賃金」:パート・アルバイトなど働く日が固定じゃない仕事など
- 「標準報酬日額」:ドライバーなど「歩合制」の仕事など
3つの計算方法についての詳細は、次の3章で解説します。
4)【ケース④】 会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる
めったにないことですが、会社の上司が有給の金額を勝手に減らす、支払いを拒否するなど不当な対応をしてくるケースもあります。
あなたが退職することに不満な上司が、嫌がらせで減額・拒否してきたり、会社に独自の慣習やルールがあって強制してきたりするのです。
有給を消化して円満退職したつもりでいたら、実際に振り込まれた基本給が6割にされていたという以下のような体験談もあります。
4ヶ月前に会社へ退職することを申告し、3ヶ月働きました。残り1ヶ月を、1日出勤し、9日間公休、21日の有給が残っていたので他日を休みました。有給届も提出し、円満に退職いたしました。
特に直近の上司は、6割になってしまうよ、などのお話はなく夜勤分のお金が減るくらいだよと伝えられていました。
実際に今月給与が支払われたものを見たら、基本給が6割になって支給されていました。
いずれにせよ、法的な根拠に基づかない理由で給料を減らすようなことは違法です。
このようなケースでは、法的な正当性をきちんと主張したり、場合によっては「退職代行」を行っている弁護士に相談したりする必要があります。(5章で解説)。
3.有給休暇の金額を決める3つの計算方法とは

有給消化でもらえる金額は、「3つの有給の計算方法」のうち、会社がどれを採用しているかによって変わります。
【有給金額の3種類の計算方法】
- 通常の賃金
- 平均の賃金
- 標準報酬日額
3つの計算方法は、どれも労働基準法で決められている計算方法です。
計算方法によっては、通常時にもらえる給料よりも金額が少なくなる場合もあるのですが、正式な計算である以上はやむをえない点は知っておいてください。
この3つの計算方法を詳しく知っておけば、「有給の給料が少ない」と感じたとき、それが「計算方法によるもの」なのか「不当に減らされた」のかを判断する助けになります。
3種類の以下の計算方法について、どのように計算するのか、もらえる額が少なくなる可能性があるのはどの方法か、確認しておきましょう。
1)通常の賃金
最も一般的なのは、通常の給料と同じ金額をそのまま有給とする計算方法です。
会社にとっても労働者にとっても計算しやすくわかりやすいことから、月給(固定給)の会社の多くはこの方法を採用しています。
具体的には、「1日分の給料がいくらになるか」を通常の給料から計算し、その金額を基本として、有給を使った日数・時間分だけもらうという方法です。
例えば月給制なら、通常の月給の1日分にあたる給料を計算式で求めて、その金額を有給1日分とします。
ただし、2章で述べたように「有給だと支払われない手当」もあるので、手当も含めた月給の場合は同じ有給金額にならないケースもある点に注意してください。
【通常の賃金の計算式】
| 給与形態 | 計算式 | 有給を使ってもらえる金額の例 |
|---|---|---|
| 月給制 (固定給) |
(月給÷1ヶ月の所定労働日数)×有給取得日数 | 月給23万円で働く社員が有給を5日間使った場合 (23万円÷20日)×5日=57,500円 |
| 日給制 | 日給×有給取得日数 | 日給1万円で働く社員が有給を2日間使った場合 1万円×2日=20,000円 |
| 時給制 | 時給×有給を使った日の所定労働時間 | 時給1,200円で働く社員が有給を3日(合わせて9時間)使った場合 1,200円×9時間=10,800円 |
また、この「通常の賃金」の計算方法は、アルバイトなど時給制の職場にはあまり向いていません。
アルバイトは月曜日に2時間、火曜日に5時間働いたりするのが当たり前なため、「所定の」労働時間というものを計りにくいからです。
時給制の方などは、次で紹介する「平均の賃金」で計算されることの方が一般的です。
2)平均の賃金
過去3か月分の給料をその期間の総日数で割ることで、1日あたりの金額を出し、有給とする計算方法です。
土日などの休みも含んだ総日数で割るため、通常の給料よりももらえる金額が少なくなりがちです。
主に働く日が固定ではないパート・アルバイトの雇用や、直近の業績を有給に反映したい歩合制の仕事などでこの計算方法が採用されています。
また、「平均の賃金」の計算は、直近3か月にたまたまシフトを入れなかった場合などに有給金額がかなり少なくなるおそれがあるため、「最低保障額」が定められています。
「最低保障額」は直近3ヶ月間に支払われた給料の総額を、その期間の労働日数で割った額の6割です。
総日数で割ったときと、労働日数で割ったときの「最低保障額」を比較し、多い方が「平均賃金」として採用されます。
以下は「平均の賃金」の出し方の例です。
【平均の賃金の計算式】
| 平均の賃金の出し方 | 計算式 | 有給の支給額の例 |
|---|---|---|
| 総日数で出す | 直近3ヵ月の給料の総額÷総日数 | 3ヶ月(91日)の給料の総額が45万円の社員の場合 (45万円÷91日)=4,945円 |
| 労働日数で出す 【最低保障額】 |
直近3ヵ月の給料の総額÷労働日数×60% | 上記と同じ条件で労働日数が45日の場合 (45万円÷45日)×0.6=6,000円 |
このケースだと、最低保障額の「6,000円」が平均賃金となります。
3)標準報酬日額
3つ目は、「標準報酬月額」を30で割って有給の金額とする計算方法です。
まず「標準報酬月額」が何かというと、労働者の月々の給料を1~50の等級にわけて、健康保険料などの計算のために日本年金機構が定めた金額をいいます。
タクシーの運転手やトラックの運転手など、歩合制を中心とした職種では、この標準報酬日額方式が採用されることがあるのです。
例として令和6年の東京の「標準報酬月額」の一部を抜粋すると、以下のようになっています。
【令和6年東京の標準報酬月額】
| 等級 | あなたの報酬月額(=月給) | 標準報酬月額 |
|---|---|---|
| 12 | 146,000~155,000 | 150,000円 |
| 13 | 155,000~165,000 | 160,000円 |
| 14 | 165,000~175,000 | 170,000円 |
上表の等級(12)をご覧ください。
給料が月に154,000円の人は、報酬月額の欄でみると「146,000~155,000」の範囲に含まれるので、標準報酬月額は150,000円です。
この150,000を30で割った5,000円(=標準報酬日額)が、有給の1日分の金額となります。
ですが、150,001円~155,000円までの給料の人の場合、標準報酬月額は150,000円にそろえられてしまうため、切り捨てられる金額が出てきてしまい損です。
さらに必ず「30」で割ることになっているので、「通常の賃金」のように労働日数で割るよりも金額は小さくなりやすいです。
このように、特に「給料が減った」ように見えやすい計算方法といえます。
4.退職時に有給消化の給料を減らされないためにできる4つのこと

これまで述べてきたように、「退職時の有給消化だから」といって、もらえるはずの給料が減らされるようなケースはめったにありません。
「計算方法」や「手当のルール」によって、通常時の給料よりもらえる金額が少なくなるケースはありますが、これは法律的にもやむを得ないことです。
ですが一部、会社の不正やミスによって、有給の給料が減ってしまうケースもあります。
このような事態を防ぐため、念の為あなたができることが4つあります。
【給料が減らされないためにできる4つのこと】
- 有給休暇取得のルールを就業規則や契約書で確認する
- 有給休暇の正確な日数を把握する
- 担当部署に正確な金額を教えてもらう
- 証拠としてやり取りを残す

これらの準備をすることで、あなた自身も正確に有給の日数を金額を把握できるため、勘違いによるトラブルを避けることにも繋がります。
トラブルのない有給消化のため、ぜひ確認しておいてください。
1)有給休暇についてのルールを就業規則や契約書で確認する
会社がどのような有給の計算方法を採用しているのか、手当の扱いはどうなっているのかなどあらかじめ就業規則や契約書などで確認しておきましょう。
会社が採用している有給の「計算方法」は就業規則に必ず書かなければいけない決まりです。
また、雇用契約書には有給の付与日数などが書いてある場合もあるので、これも手掛かりになるでしょう。
ただし、法律で指定されている「時間外手当」「休日手当」「深夜手当」などの手当以外については、就業規則に書かれていない可能性があります。
この場合は、自分がもらっている手当が有給に含まれるかなど、労務の担当者に直接聞いてみるとよいでしょう。
2)有給休暇の正確な日数を把握する
あなたが今持っている有給の正確な日数を把握しておくようにしましょう。
何日有給を与えられ、何日消化したかを確認することで正確な日数がわかります。
有給休暇については、月々の給与明細や勤怠管理システムに「使用した数」「残りの数」が書かれていることが多いので、そこで確認できれば本来は問題ありません。
ですが、有給の残りの日数について労働者に通知するのは義務ではないため、会社によっては給与明細に書かれておらず自分で把握しておく必要があります。
正確な日数がわからない場合は労務の担当者に尋ね、消化状況をつど自分で記録しておくようにしましょう。
正確な日数を把握しておくことで、有給計算のとき、実際よりも少ない日数で計算された場合にすぐ気付いて修正を求められます。
3)担当部署に正確な金額を教えてもらう
「有給取得のルール」と「正確な有給日数」について把握し、残りの有給を消化するといくら支給してもらえるのか担当部署に尋ねましょう。
事前に会社の「有給の計算方法」を把握し、ざっくりとでも自分がもらえるはずの金額を計算しておけば、教えてもらった金額と照らし合わせて大きなズレがないかを確認できます。
そこで金額について疑問点があれば、その場で答えてもらえるので安心です。
退職するのにお金のことまで聞きづらいと感じるかもしれませんが、有給を使って正しい金額を受け取るのは労働者の権利です。
有給を不当に減らされる心配があり、「金額を教えてもらう」コミュニケーションを取るのも難しいようなら、弁護士などに相談する手もあります(5章で解説)。
4)証拠としてやり取りを残す
有給休暇の保有数・消化した場合の金額については、教えてもらう際のやり取りも証拠として残しておくとより安心です。
実際に振り込まれた給料が、事前に聞いていた金額より明らかに減っていて、問い合わせても「あなたが勘違いしただけ」と認めてもらえないといったケースが絶対にないとはいえません。
書面やメール、必要なら音声録音も使ってやり取りを保存しておけば、こうした不当な対応を受けたときの反論の根拠になります。
会社側も目に見える形で記録が残っていれば、下手なことはできないと考え、意図的に金額を減らしたり支払いを拒んだりすることはやりにくくなるでしょう。
5.上司が退職時の有給を不当に減額・支払い拒否してきた場合の対処法

退職時の有給消化について、トラブルを未然に防ぐ方法は、先に解説した通り。
中には、堂々と「辞めるなら有給は6割分しか払わないよ」などと不当なことを言ってくる会社もあるでしょう。
こういったケースでは、4章で述べた「できること」を実践しつつ、自分で対処できなければ頼れる相談先に相談することが大切です。
相談先としてどこが頼れるのかを確認しておき、いざというとき1人で抱え込まないようにしましょう。
1)弁護士の退職代行を利用する
弁護士の退職代行を使い、有給消化について交渉してもらう方法があります。
退職代行は、会社に退職を伝えるところから、退職のために必要な会社とのやり取り・手続きを全て業者に代行してもらえるサービスです。
特に「弁護士」の退職代行サービスは、会社が不当な対応を取ってきたときに、法的な根拠にもとづいて会社と交渉してくれます。
有給の不当な減額や支払い拒否についてもきっちり交渉し、正当な金額を受け取れるようにしてくれるのです。
このほか、有給を不当に減らしてくるような会社なら、通常の給料や退職金などについても不当な対応を取られることもあるでしょう。
弁護士のサービスは、未払い給与や退職金など、さまざまな会社とのトラブルの対応も行ってくれるので安心して任せられるのです。
2)社内の労務管理部門や労働基準監督署に相談する
社内に「労務管理部門」や「コンプライアンス部門」など対応してもらえそうな部門・部署があれば相談し、なければ社外の労働基準監督署に相談する方法があります。
会社ぐるみではなく上司個人が横暴なケースなら、「有給を減らすと脅された」と別の部署に相談すれば、状況を改善できる可能性が高いです。
社内にそういった環境がなく頼れる部署もない場合でも、公的機関である「労働基準監督署」に無料で相談できます。
根拠なく有給を減らしたり支払い拒否したりすることは違法なので、こうした事実が確認できれば、労働基準監督署から会社に指導や是正勧告をしてもらえる可能性があります。
ただし、これらの相談先も万能ではなく、それぞれ以下のようなデメリットがあります。
【2つの相談先のデメリット】
- 労務管理部門
- →会社自体が同じ体質(ブラック体質・コンプラ意識低い体質)だと揉み消される、取り合ってくれない。
- 労働基準監督署
- →会社の体質を改善させるための活動なので、あなた自身の問題を個別に問解決してくれるわけではない
上記のような理由から、安心で確実なのは先に紹介した「弁護士の退職代行」だと考えておいてください。
6.振り込まれた後で有給の給料が「減ってる」ように感じたら

最後に、「実際に有給の給料が振り込まれた後」の話です。
きちんと会社とコミュニケーションをとって確認したのに、いざ振り込まれたら「減ってる気がする」というケースは少なくありません。
このような場合は、まず冷静に原因を確認しましょう。給料が少なく感じる原因は、2章で解説しました。
一部の手当が有給に含まれないこと、保有している日数の勘違い、「計算方法」の違いといった可能性があります。
それでも「どう考えても不当に給料が減らされている」と感じたなら、専門家である弁護士に相談してください。
弁護士は、労働基準法や就業規則に基づいて会社と交渉し、あなたが正当な金額を受け取れるようにサポートをしてくれます。
会社側も、弁護士が相手についているとなると会社が訴えられるなどのリスクを考え、支払いに応じるケースも多いでしょう。
ただし、減らされた給料が数千~5万円ほどの場合、弁護士によっては依頼する費用の方が高くついてしまう場合があります。
複数の見積もりを取るなどして、マイナスにならないように注意しつつ検討するとよいでしょう。
7.退職時の有給と給料についてよくある質問

退職時の有給消化について、給料が減ることに関する質問を取り上げました。
1)退職時に有給を「買取」してもらうと、有給消化した場合より給料は減るでしょうか
有給買取と有給消化で、基本的に金額は変わりません。
ただし、有給消化の場合は通常の給料と同じ扱いなのに対し、有給買取の場合は「退職所得」として扱われるため、税の面では買取の方がお得なこともあります。
会社によっては別のルールが設けられている可能性もあるため、まずは就業規則をよく確認しましょう。
また、そもそも就業規則に有給買取について書いていない場合や、会社が一度でも買取に合意していない場合、会社側に有給買取の義務はありません。
買い取って欲しいと申し入れても会社が合意しない場合、有給を消化するしかないので注意しましょう。
なお、有給の買取については以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。
2)自己都合退職の場合、会社都合退職と比べて有給消化したときの給料は減るでしょうか
自己都合退職の場合でも、有給の金額が会社都合退職と比べて変わることは基本的にありません。
有給の金額の計算方法は、この記事でも紹介した3つの計算方法の中から選ぶ必要があり、退職理由によって計算方法を変えることはないからです。
これが退職金の場合は、自己都合と会社都合で金額が違うケースもあります。
自己都合退職の有給消化については以下の記事でも詳しく解説しているので、あわせてご確認ください。
3)パート・アルバイト・派遣などが退職時に有給消化する場合は給料が減るでしょうか
パート・アルバイト・派遣などが有給消化する場合も、正社員の場合と同じく「退職時だから」という理由で給料が減らされることはありません。
ただし、月給の正社員と時給のパート・アルバイトという雇用形態の違いから、同じ会社でもそれぞれ有給の計算方法が違っている可能性があります。
例えば正社員は「通常の賃金」、パート・アルバイトは「平均の賃金」の計算方法を使って有給を計算すると就業規則に定められているようなケースです。
こうしたケースでは、どちらも正当な計算方法であっても、正社員よりもパート・アルバイトの方が「給料が減って見える」可能性があります。
雇用形態によって計算方法を変えている場合も必ず就業規則に書いているはずなので、気になる場合は規則を確認しましょう。
4)休職状態からそのまま退職するため残った有給を消化する場合は給料が減るでしょうか
休職状態から有給を消化して退職する場合も、給料は減りません。
長期間にわたって休職していたとしても、基本的には休職前の通常の給料を基準として計算されます。
ただし、過去3ヶ月の給料から有給金額を計算する「平均の賃金」の計算方法を会社が使っていた場合、有給を低く計算される可能性もないとはいえません。
労務の担当者に確認してみましょう。
まとめ
「退職時の有給休暇だから」といって、有給の給料が減ることはありません。
ただし、正当なルールや計算方法に沿って計算した結果、いつもより金額が少なくなることはあります。
どのようなケースで有給の給料が減って見えるかといえば、以下のようなケースです。
【給料が少なく感じられる4つのケース】
- 【ケース①】有給だと支払われない手当がある
- 【ケース②】有給日数を勘違いしている
- 【ケース③】有給の計算方法が特殊な場合
- 【ケース④】会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる
この中で、1~3については法的に正当なので、その点を把握しておくことが大事です。
ですが、4の「会社の上司が不当に減額・支払い拒否してくる」ケースだけは、有給を無駄にしたくないなら対応が必要です。
トラブルを防ぐには、あなた自身が有給消化のルールや計算方法をきちんと把握して、会社とコミュニケーションをとることが何より大切です。
それでも自分で対処が難しいと感じた場合は、弁護士の退職代行への依頼もおすすめです。
不当な有給の減額や、支払い拒否などがあった場合、弁護士は法的な根拠に基づいて交渉し、正当な金額を受け取れるようにしてくれます。






