
会社を辞めようと考えているが、残っている有給はどうなるのか気になる、という方。
「何日も残っているけど一気に消化していいの?」「会社が拒否してくることはある?」といった不安・疑問があるでしょう。
結論をいえば、退職時に残っている有給は必ず「全て」消化できます。
ただし、スムーズに有給消化できるかどうかは、引き継ぎがきちんとできるかどうかで変わってきます。
そこで本記事では、有給を必ず消化できる法的な根拠にはじまり、スムーズに有給消化する3つのコツ、有給消化して退職するまでの流れなどを解説していきます。
まだ有給消化について会社に話していない方はもちろん、有給について会社と相談中の方も、ぜひ参考にしてみてください。
【この記事でわかること】
- 退職時に残っている有給は全て消化できる!(法的に決まっている)
- 残っている有給の日数分をまとめて消化しても全く問題はない
- ただし、スムーズに有給消化するには、会社側の都合にも気を配る必要がある
- スムーズに有給消化する3つのコツ(これが大事)
- 特に大事なのは「引き継ぎをしっかりする」こと(会社にとって、引き継ぎが大きな問題なので)
- 実際に有給消化する時の手順・流れ
- 退職と有給消化の希望を伝える
- 引き継ぎしつつ有給消化できるスケジュールを調整する
- 会社の定める方法で有給申請する
- 最終出勤日の前または後で有給を消化して退職
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1.退職前に残っている有給はすべて消化できる!法的なルールとは

まず結論として、退職時に残っている有給は「全て消化できる」と法的に決まっています。
有給とは、労働者に与えられた権利であり、退職時であっても会社が拒否することはできません。
「労働基準法」には、以下の内容がはっきりルールとして明記されています。
【有給に関するルール】
- 入社から6か月間、全労働日の8割以上働いている人には有給を与えなければならない
- そしてその有給は、労働者(あなた)が申請したら必ず使わせなければならない
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない
引用元:労働基準法39条
また、以下の項目からは、法的な細かいルールについて解説していきますが、どんな条件があっても、有給消化できることに変わりはありません。
そのつもりで読み進めてみてください。
1)有給消化に日数制限はない|40日連続でも消化できる
退職時に有給が何日も残っている方は、「そんな一気に消化して大丈夫なの?」と不安に感じることがあるでしょう。
ですが、労働基準法によれば、1度に消化できる有給の日数に制限はありません。
会社で働いている期間中は、会社の業務に支障が出ることも考えて、ほとんどの人は数日単位で有給をとっているでしょう。
ですが退職時となれば、後任への引き継ぎを済ませ、あなたがいなくても会社が回せる状態になってからの有給消化になります。
このような状況であれば、会社としても、あなたが何日有給を消化しても問題ないはずです。
なお、1番多く有給を残している方は、35日〜40日の有給が残っているはずです。(日数の確認方法は後の項目で解説します。)
もちろん、40日連続で消化するのも法的には全く問題ないのでご安心ください。
2)退職前なら「時季変更権」は認められない
会社が「時季変更権」を主張してきても、有給消化はできます。
時季変更権とは、会社にとって不都合な時季に有給申請された場合、会社側から日の変更を求める権利です。
ですが、退職時の有給消化に対しては、会社の「時季変更権」が認められません。
時季変更権とはあくまで、「別の時季に有給をとらせる」権利です。
退職日を過ぎてしまえば、そもそも「有給消化できない」ですから、時季変更権は認められないのです。
3)自己都合退職であっても関係なく消化できる
退職時の有給消化は、「自己都合退職」であっても問題なくできます。
そのため会社から「自己都合退職の場合は退職前の有給消化はできない」と言われたとしても、それは不当です。
退職時に有給消化できるかどうかに、「自己都合退職」か「会社都合退職」かは全く関係ないからです。
なお、「自己都合退職だった場合は有給消化させない」という内容が就業規則に書いてあったとしても関係ありません。
法律に反した就業規則はもちろん、無効だからです。
なお、自己都合退職の有給消化については、以下の記事でより詳しく解説しています。
2.【重要】退職時にスムーズに有給消化する3つのコツ

法的には確実に消化できるといっても、その法的根拠を一方的に訴えるだけでは「スムーズに」有給消化できない場合もあります。
会社としても、有給消化を拒否はできないにせよ、なるべく会社が困らない形で有給消化してもらいたいと考えるものです。
そのため、スムーズに有給消化するには、会社側の都合にも気を配りつつ、双方(あなたと会社)にとって良い形で消化することが1番大切なのです。
会社の都合に寄り添う上で1番重要なのは「引き継ぎをきちんと済ませる」ことです。
そこでここからは、引き継ぎの準備も含めて、スムーズに有給消化するための3つのコツをお話しします。

1)引き継ぎの準備をしておく
スムーズに有給消化するのに1番大切なのは、「引き継ぎの準備を万全にしておく」ことです。
退職時の有給消化について、実は会社が1番気にするのは「引き継ぎがきちんと済むかどうか」です。
会社からすれば、引き継ぎなしで有給に入られ、そのまま辞められてしまうと支障が出るからです。
引き継ぎをスムーズに行うには、以下のような内容を1つの「引き継ぎ資料」としてまとめておくのがおすすめです。
【引き継ぎ資料にまとめる内容】
| 内容 | 具体的な記載項目 |
|---|---|
| 表紙 | 引き継ぎ者と後任者の名前、作成日を記載 |
| 目次 | 内容の全体像を把握しやすくする |
| 業務概要 | 担当業務の目的、概要、全体の流れを説明 |
| 詳細な業務内容 | 各業務の具体的な手順や注意点を記載 |
| スケジュール | 日次・週次・年次の業務スケジュールを提示 |
| 関係者リスト | 社内外の関係者の連絡先を記載 |
| トラブル対応 | 過去のトラブル事例と解決策、得られたノウハウを共有 |
| データ保管場所 | 必要なファイルやデータの保管場所を明記 |
後任者が決まっている場合は、その人と話し合う時間をとりつつ、上のような資料も使いながら引き継ぎをしてみてください。
このような資料を使って引き継ぎを効率的にすれば、問題なく有給消化に入れる可能性が上がります。
またもし後任がはっきり決まっておらず、誰に引き継ぎしたらいいか曖昧な場合も、「この資料があれば問題なく引き継ぎはできるはず」といえば納得してもらいやすいでしょう。
2)有給の日数を把握しておく
意外に見落としがちですが、有給の日数を把握しておくことも重要です。
有給の日数がわからなければ、引き継ぎも含めたスケジュールを立てられないからです。
退職までのスケジュールを立てるには、以下の3点をはっきりさせる必要があります。
【スケジュールの立て方】
- ◯月◯日〜◯日まで引き継ぎをして
- ◯月◯日〜◯日まで有給消化して
- ◯月◯日を退職日とする
勤怠管理システムなどで有給の日数がきちんと管理されており、正確にわかる場合は問題ないでしょう。
ですが規模の小さい会社などでは、「社員に何日有給があるか誰もわかっていない」というケースもしばしばあります。
こういった場合は、「◯◯日有給があるはずだから、それを消化するスケジュールを組みましょう」というように、日数を共有するところから話を始めなければなりません。
有給の日数の確認方法は、後の項目であらためて解説しています。
3)会社の人ときちんとコミュニケーションをとる
有給消化について話し合うのは人間同士ですから、やはりコミュニケーションがとても大事です。
良い雰囲気で話し合うことで、余計なトラブルを避けられるため、結果としてスムーズな有給消化に繋がります。
有給をスムーズに消化するには、(ⅰ)直属の上司と(ⅱ)有給消化の担当部署の両方としっかりコミュニケーションをとる必要があります。
【コミュニケーションが必要な相手】
- 直属の上司
…引き継ぎの方法やスケジュールについてしっかり話す - 有給消化の担当部署
…有給の申請方法、日数の確認、退職日・最終出勤日などについてしっかり話す
上記のように、それぞれ違った面から相談が必要になるため、必ず両方に話をつけましょう。
あなたの方から、「引き継ぎをきちんと済ませる意思がある」ことを示せば、円満に話し合いが進むでしょう。
3.有給日数と有給分の給料の計算方法

有給の「日数」を把握することを、スムーズな有給消化のコツとして紹介しました。
ここではその「日数」と、加えて有給分の「給料(金額)」について、具体的な計算方法を解説します。
まず前提として、有給は以下の条件に当てはまっている人なら全員が持っています。
【有給の取得条件】
- 入社から6か月間、継続して勤務していること
- 全労働日の8割以上出勤していること
有給の取得条件は厳しくありません。6ヶ月以上働いている方であれば、ほぼ必ず有給があると考えてよいです。
その上で、日数と給料の金額についてみていきましょう。
1)有給の日数の数え方
まずは有給の日数についてです。日数は正確に分かっているという方は読み飛ばしてしまって構いません。
規模の小さい会社で、「社員に何日有給があるか誰もわかっていない」というケースや、人事に言われた日数が違うと感じた方などは、チェックしてみてください。
有給の日数は、以下のように長く勤めるごとに増えていきます
【勤続年数と有給の日数】
| 付与されるタイミング(※) | 有給の付与日数 |
|---|---|
| 6ヶ月 | 10日 |
| 1年6ヶ月 | 11日 |
| 2年6ヶ月 | 12日 |
| 3年6ヶ月 | 14日 |
| 4年6ヶ月 | 16日 |
| 5年6ヶ月 | 18日 |
| 6年6ヶ月以上 | 20日 |
| それ以降 | 20日 |
- ※:働き始めてからの期間
なお有給は、与えられた日から2年間が消化期限です。
つまり例えば、働き始めてから6ヶ月後に有給が10日間与えられますが、この10日間の有給は2年後(=働き始めてから2年6ヶ月時点)で失効します。
6年6ヶ月勤めた段階で20日の有給が与えられますが、来年にまた20日の有給がもらえるため、最大で40日まで有給があることになります。
以上を踏まえて、あなたには実際何日の有給があるのかチェックしてみてください。
2)有給分の給料の計算方法
次に、有給消化によって支払われる給料はいくらなのか、という話です。
こちらは把握していなくても会社との話し合いに支障はありませんが、知っておくに越したことはないでしょう。
有給分の給料は、基本的に「その日に出勤した場合に支払われるはずの通常の賃金」がそのまま支払われます。
給料の支払い方法ごとに、以下のような計算で給料が求められます。
【給料の計算方法】
| 給与の支払い方法 | 有給取得時の給与計算方法 |
|---|---|
| 時給 | 時給×所定労働時間 |
| 日給 | そのまま |
| 週給 | 週給÷その週の所定労働日数 |
| 月給 | 月給÷その月の所定労働日数 |
| 出来高払いなど | 賃金総額÷総労働時間数×1日の平均所定労働時間数 |
なお、「基本給」以外に固定で支払われる手当なども全てきちんと払ってもらえます。
一方で「実費(実際にかかった分だけ支払われる)支給」の手当は支給されないこともあるため、いつもの金額より低くなることはあり得ます。
【例:支払われる手当・支払われない手当】
- 有給休暇でも通常通り支払われる手当
- 役職手当
- 資格手当
- 家族手当
- 住宅手当、など
- 有給休暇取得時に支払われない可能性がある手当
- 通勤手当(実費支給の場合や就業規則で規定されている場合)
- 残業手当
- 休日出勤手当
- 深夜勤務手当(基本夜勤の場合は支給される場合もあり)
- 日当や出張手当(実際の勤務に応じて支給される場合)
4.退職時に有給消化を申請〜消化するまでの手順・流れ

退職時の有給消化についてコツをおさえたところで、有給を申請してから消化して退職するまでの流れを解説していきます。
シチュエーションとしては、「これから上司に退職および有給消化の希望を伝える」状況を想定しています。
【有給を申請〜消化するまでの流れ】
- 退職と有給消化の希望を伝える
- 引き継ぎしつつ有給消化できるスケジュールを調整する
- 会社の定める方法で有給申請する
- 最終出勤日の前または後で有給を消化して退職
現在すでに退職や有給消化の希望を伝えており、相談中の方も、途中からこの流れになるはずなので、チェックしてみてください。
1)退職と有給消化の希望を伝える
退職を決めた時点で多めに有給が残っている方は特に、退職と有給消化の希望を一緒に伝えるのがおすすめです。
というのも、先に退職だけ伝えてしまうと、有給消化を考慮しないスケジュールで、退職日だけが先に決まってしまう場合があるからです。
退職日をすぎてしまうと、有給が失効になるため、絶対に消化できなくなってしまいます。
このような事態を避けるため、「退職」と「有給消化」をセットで伝えることが大切なのです。
また、退職と有給消化の希望は、先述の通り(ⅰ)直属の上司と(ⅱ)有給消化の担当部署の両方に伝えましょう。
【コミュニケーションが必要な相手】
- 直属の上司(同じ部署の先輩など)
…有給に入るまでの引き継ぎの方法やスケジュールについて相談する必要があるため - 有給消化の担当部署(人事や総務などが担当していることが多い)
有給の申請方法、日数の確認、退職日や最終出勤日などについて相談する必要があるため
この両方と話し合うことで、会社を困らせることなく、円滑に話を進めやすくなります。
なお、余計なトラブルを避けるには、「言い方」も重要です。
引き継ぎのスケジュールと絡めながら、「〇月〇日から〇日まで有給休暇を頂きたいのですが、よろしいでしょうか?」と、意志を伝えつつ上司の判断を仰ぐ聞き方をするのが無難です。
2)引き継ぎしつつ有給消化できるスケジュールを調整する
有給消化について上司に伝えたら、引き継ぎしつつ有給消化できるスケジュールを立てます。
これは直属の上司・部署内の上司や、後任の人と綿密に話し合いながら決めましょう。
この時に、先に紹介した「引き継ぎ資料」を用意しておくことで、スケジュールが立てやすくなるはずです。
まずあなたの部署の方で引き継ぎのスケジュールを立てた後、有給消化の担当部署に「この日までに引き継ぎが終わるので、そこから有給に入っても大丈夫ですか?」と聞いてみてください。
担当部署としても、引き継ぎが問題なくできることが分かれば、スムーズに手続きしてくれるでしょう。
3)会社の定める方法で有給申請する
先述のスケジュールがまとまったら、会社が定めている形式で有給申請するとよいです。
申請書に必要事項を記入して人事に提出する、といった形式であれば、それにならいましょう。
正規の手順であればトラブルになりにくいですし、会社の担当者も処理が楽になるので歓迎されるはずです。
なお、有給申請の理由の書き方が気になる方もいるでしょう。
本来であれば有給の申請に理由は必要ありませんが、以下のような書き方が通例となっています。
【有給申請の理由の書き方】
- 「退職前の有給休暇消化のため」
- 「退職に伴い、年次有給休暇を消化するため」
- 「私用のため」
いずれにしても、簡潔な書き方で大丈夫です。
4)最終出勤日の前または後で有給を消化して退職
有給消化のスケジュールについて会社と合意できたら、いよいよ有給を消化して退職することになります。
有給消化のパターンとしては、主に下記の2通りがあります。
【2つの有給消化パターン】
- 最終出勤日の前に有給消化
→引き継ぎが終わってから有給消化に入り、消化明けに最終出勤
流れ: 有給消化 → 最終出勤日 (=退職日) - 最終出勤日の後に有給消化
→引き継ぎが終わって、最終出勤してからから有給消化に入る
流れ: 最終出勤日→有給消化→退職日
退職日が8月30日の場合、それぞれのパターンでどんなスケジュールになるかは、以下の図でご確認ください。


どちらのパターンで有給消化するかは、会社との話し合いで決めます。
労働者(あなた)目線でいえば、2つ目の「最終出勤日の後に有給消化する」パターンの方が、転職活動などのスケジュールを立てやすくて良いでしょう。
5.退職前に「有給消化できない」と言われた場合の対処法

ここまで、退職時の有給消化ができる前提で解説をしてきましたが、会社によっては「有給消化できないよ」と言われることもあり得ます。
有給消化を拒否することは違法ですが、ブラック寄りの会社や、コンプラ意識の低い会社であれば、拒否されることも実際にあるのです。
「有給消化できない」と言われた場合は、会社に認めさせるための「交渉」が必要になります。
ここでは、その交渉のポイントを4つ紹介します。
なお、「有給消化できない」と言われた場合の対応については以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
1)なぜ有給消化できないのか確認する
「有給消化できない」と言われるからには、その理由があるはずです。
会社が有給消化を拒否する理由は、主に以下の2つが多いです。
【会社が有給消化を拒否する理由】
- 引き継ぎしてくれないと困るから
- 引き継ぎなどは関係なく、有給分のお金を払う気がない
どちらの言い分にしても法的には不当ですが、交渉の仕方が変わってきます。
1つ目の引き継ぎの問題であれば、引き継ぎ資料を作り、「引き継ぎは問題なくできる」ということを主張すればOK。
2つ目の「お金を払う気がない」ということであれば、法的な根拠をもって、会社が「違法」だと主張する必要があります。
それぞれのケースごとの具体的な交渉方法は後の項目で詳しく述べます。
まずここでは、どんな理由で「有給消化できない」と言われているのか確認してみてください。
2)引き継ぎが問題なくできることを示しつつ、交渉する
「有給消化できない」と言われる場合も、その理由は引き継ぎの問題であることが多いです。
ここでの交渉は、先に述べたのと同じで、「引き継ぎは問題なく済ませられる」または「済ませた」という事実があれば、交渉がかなりしやすくなります。
具体的な策としては、やはり「引き継ぎ資料」を作って共有するのが1番有効でしょう(先の項目で解説)。
3)有給の買い取りを提案してみる
引き継ぎができるスケジュールを調整してもなお「有給消化できない」と言われる場合は、「有給の買取」として提案してみるのも1つの手です。
買取してもらう場合、退職日までにあなたが「休む(有給として)」ことはできませんが、有給分のお金は手に入ります。

なお原則としては、有給の買い取りは「労働者のワークライフバランスと健康を確保する」という目的から外れているため、違法とされています。
ですが、これは「会社が一方的に有給休暇を買い取る」ことが違法という話であり、あなたから買い取りを持ちかける分には問題ありません。
特に引き継ぎの問題から「有給消化できない」と言われている場合は、買い取りに応じてくれる可能性は十分にあります。
有給の買取については、買取の手順や注意点などを以下の記事で詳しく解説しているので、あわせて確認してみてください。
6.退職前に有給消化できなさそうな場合の相談先3選

「有給消化できない」と言われた場合は、先に解説した3つのポイントをおさえて交渉すれば、合意が取れる可能性が高いです。
ですが、交渉してもなお有給消化を拒否し続ける会社もあります。
その場合は、以下の3つの相談先に話を持ちかけてみてください。
【3つの相談先】
- 弁護士(おすすめ)
- 労働基準監督署
- 労働組合
なお、3つの中で1番おすすめなのは間違いなく「弁護士」です。それぞれの相談先について、実際にやってくれることを解説していきます。
1)相談先①:弁護士
交渉しても有給消化できそうにない場合は、「弁護士」への相談が1番おすすめです。
弁護士は、あなたの代理人となって、会社との交渉を全て引き受けてくれます。
先述の通り、退職する時に「有給消化できる」ことは法的に決められたルールです。
法的な正当性がある以上、弁護士は何があっても交渉で負けることはありません。
なお、弁護士の中には「退職代行」というサービスも同時にやっているところもあり、当サイトでは非常におすすめしています。
退職代行までやっている弁護士なら、初めから有給消化の交渉を全てやってくれますし、そのまま手続きまで代行してくれるからとても便利です。
2)相談先②:労働基準監督署
労働基準監督署とは、企業が法律を守って運用しているかを監督する機関です。
「有給消化できないと言われた」と相談すると、「それは法令違反だ」と会社に通達したり、改善するよう勧告したりしてくれます。
ただし、労働基準監督署はあなたの有給問題を個別に助けてくれるところではないため、相談しただけで問題が解決するとは考えられません。
実際の使い方としては、あなた自身が会社と交渉する中で、「労働基準監督署にも相談している」という証拠(やりとりの履歴など)を見せて、1つの交渉材料とすることです。
労働基準監督署からの勧告ならまだしも、「実態の調査をする」とまで言い出されると会社も困るはずです。
そのため、これによって会社が折れて有給の支払いを認める可能性もあるでしょう。
3)相談先③:労働組合
労働組合とは、従業員が労働条件の改善などのために組織する団体のことです。
社内の労働組合に加入している方は、「団体交渉権」を使って有給消化の交渉に協力してくれるはずです。
ただし、労働組合が機能しておらず、頼りにならないケースも少なくありません。
労働組合員も同じ会社の人間ですから、上司と対立することはあまりしたくないからです。
7.退職時の有給消化についてよくある質問

最後に、退職時の有給消化についてよくある質問をまとめました。
1)退職時に有給消化すると、給料が減ることはありますか?
退職時の有給消化であっても、給料が減ることはありません。
中には「退職時の有給消化だと給料を何割かカットする」という会社もあるようですが、これは違法です(参照:Yahoo!知恵袋)。
ただし、以下のような「実費(実際にかかった分だけ支払われる)支給」の手当が支給されないため、いつもの金額より低くなることはあり得ます。
【例:実費支給の手当】
- 通勤手当(実費支給の場合や就業規則で規定されている場合)
- 残業手当
- 休日出勤手当
これらは有給消化の場合、実際にかかった費用とはいえないため、減るのは仕方がないと考えましょう。
逆に、基本給が何割かカットされたりすることはないのでご安心ください。
退職時の有給の給料が減って見えるケースについては、以下の記事でも詳しく解説しています。
2)退職時、人手不足を理由に有給消化できないことはありますか?
退職時に人手不足を理由に有給消化できなくなることはありません。
有給休暇は労働者の権利であり、会社は原則として拒否できませんし、単なる人手不足は、有給休暇取得を拒否する正当な理由とはならないからです。
退職時でなければ、何人かの社員が1度に有給申請をしてきた場合、会社が「時季変更権」を使うことで有給消化時期をずらされるケースはあります。
ですが、退職日以降に有給消化をずらすことはできないため、退職時であればこの心配もありません。
3)退職時に有給消化する場合、保険証はいつ返却すればいいですか?
保険証は、退職日以降に返却すれば大丈夫です。
有給消化の仕方によって以下の2パターンが考えられるでしょう。
【2パターンの保険証返却】
- 有給消化の後に最終出勤日の場合
→最終出勤日そこで手渡しで返却 - 有給消化の前に最終出勤日がくる場合
→退職日以降に郵送で返却
有給消化の前に最終勤日の場合、会社によっては最終出勤日に返却を求められる場合もあります。
ですがその場合、保険証の効果は退職日まで有効なので、あなたが損する可能性があります。
その点を指摘して、郵送返却を許可してもらえるよう交渉するのがおすすめです。
4)退職前の有給消化中でもボーナス(賞与)は支払われる?
退職前の有給消化中でも、「退職日」が過ぎていなければボーナス(賞与)は支払われます。
多くの会社では、ボーナス支給日の時点で会社に「在籍」していることが条件となっています。
退職前の有給消化中でも、まだ会社に「在籍」はしていますから、支給対象となります。
ただし、会社によってはこういった背景を無視して不支給の処理をしてしまうところもあるため、注意してください。
ボーナス支給に有給消化時期が重なる場合は、担当部署に「ボーナスは支給されるか」と確認をとっておきましょう。
なお、退職前の有給消化中のボーナスの支給については、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてください。
まとめ
法的には、退職時に残っている有給は「全て」消化できることになっています。
1度に消化する有給の日数についても、法的な制限はないので、残っている有給の日数分を一気に消化しても全く問題はありません。
ただし実情として、スムーズに有給消化するには、会社側の都合にも気を配り、双方(あなたと会社)にとって良い形で消化することが1番大切です。
会社の都合に寄り添う上で1番重要なのは「引き継ぎをきちんと済ませる」ことです。
会社が退職前の有給消化を渋る場合、「引き継ぎがきちんと済まされないと困るから」という理由であるケースがほとんどだからです。
そのため、スムーズに有給消化するには、以下の3つのコツを抑えておくと良いです。
【スムーズに有給消化する3つのコツ】
- 引き継ぎの準備をしておく
- 有給の日数を把握しておく
- 会社の人ときちんとコミュニケーションをとる
実際に退職時の有給消化をするには、以下のような手順・流れで行われるのが通例です。先に挙げた3つのコツを抑えていれば、スムーズに消化できるでしょう。
【有給を申請〜消化するまでの流れ】
- 退職と有給消化の希望を伝える
- 引き継ぎしつつ有給消化できるスケジュールを調整する
- 会社の定める方法で有給申請する
- 最終出勤日の前または後で有給を消化して退職
なお、会社によっては法的な根拠を無視して「有給消化できないよ」と言ってくるところもあります。
そういったケースでは、自分である程度の交渉をしてみて、難しそうであれば弁護士への相談を検討してみてください。






