スタートアップ
1,227 PV

ファクタリングは違法?違法になるケースと2つの摘発事例を解説!

はじめに

近年、「ファクタリング」は企業の資金調達方法の一つにもなっています。
ですが、過去にはファクタリングと称した犯罪も発生しており、金融庁により注意喚起も行われました。

そもそもファクタリング事業は違法なのでしょうか?
これからファクタリング事業を始めようと検討している事業者にとっては、一番の関心事かもしれません。

そこで今回は、ファクタリング事業について、実際の事例にも触れながらその違法性の有無を解説していきたいと思います。

1 ファクタリングとは

ファクタリング(factoring)」とは、他人が有する債権を一定の手数料を徴収して買い取り、そのうえで買い取った債権を自身で回収することをいいます。

たとえば、事業者が商品やサービスを提供する場合には、商品代金やサービス料金が発生します。
この場合、契約によって支払期限が設けられていると、事業者はすぐに支払いを受けることはできません。
そうすると、事業者によっては、資金繰りに支障を来す可能性があります。

ファクタリングは、このような事業者のニーズに応え、支払期限前に事業者が有する債権(商品代金やサービス料金)を買い取り、後に自らが債権回収を行うというサービスなのです。

これにより、事業者は支払期限まで待たなくても現金を手にすることができ、資金繰りに困るということもなくなるのです。

2 ファクタリングは違法?|ファクタリングの法的性質

ファクタリングは、大別して「二者間ファクタリング」と「三者間ファクタリング」の2つに分類することができます。

以下では、それぞれについて違法性の有無を見ていきます。

(1)二者間ファクタリング

二者間ファクタリング」とは、事業者と利用者の二者間で行われるファクタリングのことをいいます。
つまり、事業者と利用者の間で債権を売買するのが二者間ファクタリングです。

以下の条文をご覧ください。

    【民法555条】

    売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。

    【民法466条】

    債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。


この条文からもわかるように、二者間ファクタリングの法的性質は、「債権を対象とした売買契約」です。
そのため、二者間ファクタリングは、原則として違法ではありません。

(2)三者間ファクタリング

三者間ファクタリング」とは、事業者と利用者、そして、債務者(利用者に対し本来お金を支払う者)の三者間で行われるファクタリングのことをいいます。

二者間ファクタリングと大きく異なるのは、三者間ファクタリングでは、債務者の承諾を得たうえで、ファクタリングが実行されるということです。

三者間ファクタリングについても、その法的性質が「債権を対象とした売買契約」であるかぎり、原則として違法になることはありません。

3 給与ファクタリングの法的性質

給与ファクタリング」とは、給与債権を対象にして行われるファクタリングのことをいいます。

「今月は少しお金を使いすぎた」「急な出費があってお金がない」といった場合でも、給与ファクタリングサービスを利用することで、給料日前に現金を手に入れることができるため、利用者にとっては大変ありがたみのあるサービスだといえます。

もっとも、2020年3月、金融庁は給与ファクタリングを事業として行うことは「貸金業」にあたるとの見解を示しています。

個人が勤務先に対して有する給与(賃金債権)を対象とした「給与ファクタリング」を業として行うことは、貸金業に該当(貸金業登録が必要)

                       金融庁ウェブサイト|ファクタリングに関する注意喚起より

給与ファクタリングが対象とする給与(債権)は、労基法上、使用者から労働者に対し直接支払われなければなりません。
たとえ、給与債権を買い取ったとしても、買い取った事業者が使用者に対してその支払いを求めることはできません。

そのため、給与債権を買い取った事業者は、労働者に対してその支払いを求めざるを得ません。

そうすると、給与ファクタリングの仕組みは、事業者から労働者への金銭の交付だけでなく、事業者による労働者からの金銭の回収についても含まれていると見ることができます。
これは、「貸付けとその返済」という機能と同じであるといえるため、「貸金業」に該当するとされました。

そのため、貸金業の登録を受けずに給与ファクタリングサービスを行った場合には、貸金業違反として罰則の対象になります。

4 ファクタリング業者の摘発事例

(1)貸金業法違反、出資法違反で摘発された事例

2021年1月、警視庁は、給与ファクタリング大手の「ZERUTA(ゼルタ)」の社長ら7名を貸金業法違反および出資法違反の容疑で逮捕したと発表しました。

同社は、貸金業の登録を受けずに給与ファクタリング業を営んだうえ(貸金業法違反)、法外な利息を得ていました(出資法違反)。

(2)出資法違反で摘発された事例

2021年2月、売掛債権を買い取るファクタリング業者を装い、ヤミ金融を営んだとして一般社団法人ハートライフ協会の代表理事ら6名が出資法違反などの疑いで逮捕されました。

同協会は、売掛債権を買い取った形にして利用者に金銭を渡し、2~3割程度の実質的な利息を上乗せした額を利用者に返済させていました。
利息は、最高で法定金利の約34倍に相当する年利683%に上っていました(出資法違反)。

5 まとめ

ファクタリング事業を営む場合には、その仕組みを十分に検討する必要があります。

給与債権を対象とする場合には、仕組みの如何を問わず、貸金業の登録を受けなければなりません。
また、債権を買い取る際の手数料にも十分に注意する必要があります。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

   

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

                     

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

"スタートアップ"の人気記事はこちら

まだデータがありません。

TOPCOURTコミュニティに参加しませんか?
あなたのビジネスや法的なお悩みを気軽にお話ください。私たちがすぐにフォローアップいたします。
お問い合わせ