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特定商取引法に基づく表記とは?書き方における6つのポイントを解説

はじめに

ECサイトなどで「特定商取引法に基づく表記」というページを見たことがあるという人は多いのではないでしょうか。

ネットショップなどの通信販売を始める場合、ECサイト上に「特定商取引法に基づく表記」というページを設けて掲載する必要があります。
なぜこのような表記が必要になるか、みなさんはご存知でしょうか?

仮に掲載せずにサービスを始めると、罰則の対象にもなるため、大変重要な表記なのです。

今回は、「特定商取引法に基づく表記」について、掲載を必要とする理由をはじめ、書き方のポイントなどを弁護士がわかりやすく解説します。

1 「特定商取引法に基づく表記」とは|必要な理由

特定商取引法に基づく表記」とは、消費者のためにまとめられた一定の情報のことをいいます。

具体的には、会社名や所在地といった事業者情報をはじめ、事業者が提供する商品やサービスの価格、返品に関する事項などが表記されたものをいいます。

ネットショッピングは、時間や場所を問わず自由にショッピングができるため、消費者にとっては大変便利なものです。
ですが、その反面、ネット上ですべてが完結するため、通常のショッピングのように販売者と顔を合わせるということもありません。

そのため、少なからず不安を感じることもあると思います。

そこで、特定商取引法は、事業者に対して、会社情報や商品・サービスに関する情報などを表示することを義務付けているのです。
そうすることで、消費者は安心してネットショップを利用できるのです。

2 書き方のポイント

「特定商取引法に基づく表記」に記載する事項は、事業者が提供する商品やサービスによって、多少違いはあります。

以下では、商品やサービスの内容に関わらず、必ず記載しなければならない事項について見ていきます。

  1. 事業者の名称・所在地・連絡先
  2. 販売価格
  3. 商品・サービスとは別に必要な料金
  4. 支払方法
  5. 商品・サービスの引渡時期(利用可能時期)
  6. 返品・キャンセルに関する事項

(1)事業者の名称・所在地・連絡先

商品やサービスを提供する事業者の名称(会社名)と所在地(住所)、連絡先を記載します。

たとえば、番地等を省略して記載したり、私書箱などを所在地として記載したりすることは認められていません。

また、商品やサービスに関して消費者が問い合わせる際の連絡先も併せて記載します。

(2)販売価格

商品やサービスを提供する際の価格を税込で記載します。

もっとも、商品数が多いなどの理由で販売価格を表示しきれない場合は、「各商品ページをご参照ください」といったように表記することも可能です。

(3)商品・サービスとは別に必要な料金

商品やサービスの対価とは別に料金が発生する場合は、項目ごとに分けて金額を記載する必要があります。

たとえば、配送料や手数料が必要となる場合に、「配送料はお客様の負担となります」「一定の場合には手数料が発生します」といった記載だけでは、消費者が実際に負担しなければならない金額がわかりません。

そのため、具体的な項目を記載するとともに、金額もきちんと記載することが必要です。

(4)支払方法

利用可能な支払方法をすべて記載する必要があります。

たとえば、クレジットカードによる支払いが可能であるにもかかわらず、その旨を記載しないことはNGです。

(5)商品・サービスの引渡時期(利用可能時期)

商品を提供する場合には、商品の発送時期を記載します。

たとえば、「ご注文確認後に発送します」「お支払いの確認が取れ次第発送します」といった記載だけでは、事業者が注文(支払い)を確認してからいつ発送するのか、その具体的な時期がわかりません。

そのため、「ご注文確認後3営業日以内に発送します」といったように具体的な日数を記載する必要があります。

また、アプリなどのサービスを提供する場合には、アプリが利用可能となる時期を具体的に記載することが必要です。

(6)返品・キャンセルに関する事項

消費者がいったん購入した商品について、返品・交換することの可否を記載します。

また、返品・交換が可能である場合は、その条件や返品・交換に要する送料をどちらが負担するかなどを明確に定めておく必要があります。

たとえば、「商品の返品についてはご相談に応じます」といった記載だけでは、返品・交換を行うための条件がわかりません。

そのため、どのような場合に返品に応じてくれるのか(条件)を明確に記載したうえで、返品・交換の期限や送料負担に関する事項を記載することが必要です。

※「特定商取引法に基づく表記」について、書き方のポイントを詳しく知りたい方は、「【テンプレート有】特定商取引法に基づく表記の書き方13のポイント」をご覧ください。

3 「特定商取引法に基づく表記」をしないとどうなる?

「特定商取引法に基づく表記」を掲載する必要があるにもかかわらず、これに違反した場合、事業者は一定のペナルティを課される可能性があります。

具体的には、以下の行政処分を受ける可能性があります。

  • 業務改善の指示
  • 業務停止命令(最大2年間)

これに加え、消費者庁サイトにおいて、行政処分を受けたことが社名とともに公表されることになります。

さらに、業務改善の指示や業務停止命令に従わなかった場合、事業者は、

【業務改善の指示に従わなかった場合】

    • 最大6ヶ月の懲役
    • 最大100万円の罰金

【業務停止命令に従わなかった場合】

  • 最大3年の懲役
  • 最大300万円の罰金

のいずれか、または両方を科される可能性があります。

加えて、事業者が法人である場合には、違反行為者とは別に、

【業務改善の指示に従わなかった場合】

    • 最大100万円の罰金

【業務停止命令に従わなかった場合】

  • 最大3億円の罰金

を科される可能性があります。

4 まとめ

「特定商取引法に基づく表記」は、消費者との信頼関係を築くためにも必要なものです。
事業者や商品・サービスに関する情報が明確になっているからこそ、消費者は安心してサービスを利用することができるのです。

今回見てきたように、「特定商取引法に基づく表記」を作成する際には、まずは基本的な事項をきちんと押さえたうえで、自社商品・サービスに応じて、適切な情報を盛り込むことが大切です。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

   

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

                     

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

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