
はじめに
2021年1月18日、シェアサイクルサービス「Charichari(チャリチャリ)」を運営する「neuet株式会社」が、資金調達(金額は不明)を実施したと発表しました。
また、neuetは福岡における事業拡大をKBCと協業で進めることも合意し、KBCの発信力や制作力の協力を受けながら、日常移動のインフラとして定着を促すために様々な連携をはかってまいります。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000015.000048038.htmlより
今回は、この「Charichari」のビジネスモデルついて見ていきたいと思います。
1 サービスの概要
「Charichari(チャリチャリ)」は、アプリ一つで自転車を利用できるシェアサイクルサービスです。
(なお、チャリチャリ事業は、メルカリが2018年2月にスタートした「メルチャリ」事業がもとになっているようです。)
新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言後には、三密を避けるための移動手段のひとつとして、サービスを利用する人が増えています。
また、政府が示す新たな生活様式に自転車が含まれており、シェアサイクルサービスに対する社会的要請は高くなっています。
一見すると、既に展開されている他社のシェアサイクルサービスと変わらないようにも思えますが、neuet社がミッションとして掲げているのは、「シェアサイクル」ではなく、「まちの移動の、次の習慣をつくる」ことです。
最大規模となる200台の自転車を配備する名古屋では、従来から「とめる」「走る」「利用する」の3点を念頭に置いた放置自転車対策や走行空間づくりが進められており、多くの駐輪スペースが確保されているだけでなく、自転車道なども十分に整備されているという特性があります。
Charichariは、この中でも「利用する」に着目して、名古屋市内における本格的なシェアサイクルサービスとして、名古屋の市街地活性化に貢献していくとしています。
2018年2月27日に、福岡市でサービスを開始して以降。福岡市や民間企業による協力の下、福岡市内における専用駐輪ポート数は350ヵ所以上となっています。2020年7月15日より名古屋市で、同年9月16日からは東京の浅草エリアでもサービスを開始し、現在までに累計で380万回以上、月間で27万回以上の利用数を誇ります。
2 サービス提供の流れ
「Charichari」は、以下のように自転車を簡単に利用することができるサービスです。
- 起動したアプリで自転車のサドルにあるQRコードを読み取る
- 自転車で移動する
- 移動先のポートに駐輪し、車体をロックする
利用料金は、4円/1分となっており、分単位で24時間いつでも自転車を利用することができるという気軽さが大きな魅力となっています。
料金は、月末にまとめてクレジットカード、もしくはコンビニ決済により支払うこととされています。
3 「Charichari」が生み出す社会貢献
「Charichari」は、以下のような社会貢献を生み出しています。
- 放置自転車の減少
- 利便性の向上、地域の活性化
- 空きスペースの活用
(1)放置自転車の減少
福岡市において、専用駐輪ポート数が350ヵ所以上にまで増えたことの理由のひとつとして、neute社とともに福岡市が「福岡スマートシェアサイクル事業」に乗り出したことが挙げられます。
福岡市・天神地区では、以前から放置自転車が問題となっており、その数も全国でワーストになるほどでした。
そのため、福岡市は、駐輪場を整備したり、放置自転車を撤去したりするなど、市内の放置自転車を減らすための対策に取り組んでいます。
Charichariが提供する、ポートに駐輪した自転車を共同利用するというシェアサイクルサービスは、放置自転車を減らす有効な対策の一つとなっており、実際に放置自転車の数は大幅に減っています。
(2)利便性の向上と地域の活性化
neuet社は、JR東日本の協力を得て、駐輪ポートの開拓を進めています。
2020年12月1日にはJR御徒町駅の高架下空きスペースに、東京エリアでは最大規模となる駐輪ポートを設置しました。
また、JR東日本都市開発が運営する商業施設やJR沿線の高架下空きスペースなどにも同様に駐輪ポートを設置しており、今後、駐輪ポートの数は増えていくものと考えられます。
駐輪ポートの増加は、ユーザーの利便性向上に資するものであり、また、地域の活性化にも繋がるものとして期待されます。
(3)空きスペースの活用
たとえば、JR東日本を例に見ると、鉄道高架下の空きスペースは、地形やそれに伴う活用の難しさなどから利用用途が限られており、活用や管理をすることが困難な場所です。
地形などに応じて、活用できる駐輪ポートを設置することにより、鉄道沿線の回遊性を向上できるだけでなく、運営側により駐輪ポートの清掃などを担うことも可能になります。
このように、空きスペースを活用することにより、回遊性の向上や行き届いた管理を実現することが可能になります。
4 今後の展開

シェアサイクル事業については、5~6年前からMobikeやofoなどの中国ベンチャーが注目されましたが、放置自転車などの問題に直面し、伸び悩んでいるという報道もありました。
また、日本の道路交通法上、自転車は軽車両と位置付けられていますが、ルールに合った物理的なインフラ(自転車専用レーン等)がまだまだ未整備であったり、自転車の損害保険加入率がまだまだ低いという問題もあります。
このようなネガティブな問題はありますが、移動手段としての自転車の活用が促進されることによる社会へのプラス効果は見逃せないところです。
今回の増資は、「KBC(九州朝日放送)」が引受先となっており、今後は、KBCのもつ強力な発信力と制作力などの支援を受けながら、Charichariを通した街の活性化、移動データを用いたマーケティングなどを検討していくとしています。
自転車をシェアするというところから、ユーザーの利便性向上だけでなく、放置自転車や地域活性化といった公的問題へのプラス作用をも生み出すcharichariのような発想は、今後一層必要とされるかもしれません。
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