スタートアップ
2,049 PV

食品衛生法の改正ポイント7つを弁護士がわかりやすく解説!

はじめに

段階的に施行されてきた改正食品衛生法が、2021年6月より全面施行となりました。

今回の改正には、HACCP(ハサップ)の義務化をはじめ、営業許可制度の見直しなど、重要なポイントが数多く盛り込まれています。
食品等を取り扱う事業者は、今回の改正点をきちんと理解し、改正食品衛生法に則って事業を運用していく必要があります。

そこで今回は、改正食品衛生法について、その改正ポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

1 食品衛生法の改正ポイント

今回の改正ポイントは、以下の7点です。

  1. 食中毒への対策強化
  2. HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化
  3. 健康被害情報届出の義務化
  4. ポジティブリスト制度の導入
  5. 営業許可制度の見直し・営業届出制度の創設
  6. 自主回収報告制度の創設
  7. 輸出入食品の安全証明の充実

2 食中毒への対策強化

広域的な食中毒の発生・拡大を防ぐために、国や都道府県等の自治体が相互に情報共有するなどして連携・協力を図ることになりました。

また、緊急を要する食中毒が発生した場合において、迅速な対応を可能とするために、広域連携協議会が新たに設置されました。

緊急時には、この協議会を活用して、迅速に食中毒に対応することとされています。

3 HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化

HACCP(Hazard Analysis and Critical Control Point:ハサップ)」とは、原材料の入荷・製造から製品の出荷にいたるまでの一連の工程において、健康被害を引き起こすおそれのある危害要因を科学的根拠に基づいて管理する手法のことをいいます。

今後は、原則として、すべての食品等事業者において、一般的衛生管理の実施に加え、HACCPに沿った衛生管理を実施することが必要になります。

具体的に実施すべき衛生管理は、事業者の規模に応じて、以下のように定められています。

    【大規模事業者:HACCPに基づく衛生管理】

     コーデックスのHACCP7原則に基づき、食品等事業者自らが使用する原材料や製造方法などに応じ、計
     画を作成し管理を行うことが必要です

    【小規模事業者等:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理】

     各業界団体が作成する手引書を参考に、衛生管理に取り組むことが必要です


※HACCPに沿った衛生管理について詳細を知りたい方は、厚労省ウェブサイト「HACCP(ハサップ)」をご覧ください。

4 健康被害情報届出の義務化

近年、健康食品(サプリメントなど)に関して、健康被害の相談が増えていることなどを受けて、食品等事業者に「健康被害情報の届出」が義務付けられることになりました。

具体的には、厚生労働大臣が定める特別の注意を必要とする成分等を含む食品(指定成分等含有食品)との関連が疑われる健康被害が発生した場合において、同食品を取り扱う事業者が、①人の健康に被害を生じさせた旨の情報、②人の健康に被害を生じさせるおそれがある旨の情報を得たときは、その情報を都道府県知事等へ届出する必要があります。

厚生労働大臣が特別の注意を必要とする成分等として指定しているのは、以下の4品目です。

  • コレウス・フォルスコリ―
  • ドオウレン
  • プエラリア・ミリフィカ
  • ブラックコホシュ


健康被害に関する情報を収集することにより、摂取した場合に起こりうる健康被害のリスクを国民に周知し、被害拡大を防止する狙いがあります。

5 ポジティブリスト制度の導入

ポジティブリスト制度」とは、食品用器具と容器包装について、安全性が担保された物質のみを使用できるとする仕組みのことをいいます。

これまでは、使用を禁止されている物質に該当しなければ、どのような物質でも使用することができました(ネガティブリスト制度)。
そのため、国外で使用禁止となっている物質であっても、日本で禁止されていなければ、使用することができました。

今後は、安全性が担保された物質でなければ使用することができないため、一般消費者は安心して商品を購入できるようになります。


※ポジティブリスト制度について詳しく知りたい方は、厚労省ウェブサイト「食品用器具・容器包装のポジティブリスト制度について」をご覧ください。

6 営業許可制度の見直し・営業届出制度の創設

食中毒のリスクなどを考慮し、現在の営業許可の業種区分が見直されるとともに、食品を扱う事業者の届出制度が新設されました。

たとえば、以下のような制度の見直し・新設が挙げられます。

  • 水産製品製造業や液卵製造業、漬物製造業などを法許可業種として新設
  • あん類製造業を菓子製造業に統合
  • 乳類販売業や食肉販売業、魚介類販売業を届出業種に移行


これまで営業許可の対象でなかった業種も、今回の改正により、新たに許可・届出が必要となるケースもあるため、注意が必要です。


※営業許可制度や営業届出制度について詳しく知りたい方は、厚労省ウェブサイト「営業規制(営業許可、営業届出)に関する情報」をご覧ください。

7 自主回収報告制度の創設

事業者は、リコールを行う場合、行政への報告が義務付けられることになりました。

これにより、行政は的確に監視指導や情報提供を行うことができ、健康被害の発生を防止することが可能になります。

また、事業者から届出のあったリコール情報は厚労省のウェブサイトで公表され、一般消費者がすぐにその情報を確認できるようになります。


※自主回収報告制度について詳しく知りたい方は、厚労省ウェブサイト「自主回収報告制度(リコール)に関する情報」をご覧ください。

8 輸出入食品の安全証明の充実

輸入される食肉などについて、食品衛生上の危害の発生を防止するために、HACCPに基づく衛生管理が講じられていない国で製造された食肉等を輸入することはできなくなりました。

また、輸入される乳製品やふぐ・生食用かきについては、輸出国の政府機関によって発行された証明書(衛生証明書)が添付されたものでなければ、これを販売目的で輸入することはできなくなりました。

9 まとめ

HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理の制度化や営業規制の強化など、今回の改正ポイントは、事業者にとっていずれも重要です。

事業者は、各ポイントを正確に理解したうえで、事業を運用していくことが大切です。


弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

   

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

                     

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

"スタートアップ"の人気記事はこちら

まだデータがありません。

TOPCOURTコミュニティに参加しませんか?
あなたのビジネスや法的なお悩みを気軽にお話ください。私たちがすぐにフォローアップいたします。
お問い合わせ