
はじめに
株式会社は、株式を発行することにより資金を調達をすることができます。
その際、普通株式とは別に、発行する株式の内容を自由に設計できる「種類株式」があります。
種類株式は、会社法によりその種類が定められており、そのうちの一つに「優先株式」があります。
近年、この優先株式を発行する方法で資金調達を実施する事業者が増えています。
今回は、この優先株式について、発行手続きの流れを中心に解説したいと思います。
1 優先株式とは
「優先株式」とは、種類株式のうちの一つで、普通株式に比べて優先的な権利が付与されている株式のことをいいます。
たとえば、普通株式に優先して多くの配当金を受け取ることができたり、企業の解散時に優先的に企業の残余財産を受け取ることができたりする株式が優先株式です。
その一方で、議決権に一定の制限が設けられるといった特徴があります。
優先株式を発行する際には、種類株式を発行する場合のルールに従って発行することが必要になります。
※優先株式の種類について詳しく知りたい方は、「優先株式とは?資金調達を目的として発行する際の4つの注意点を解説」をご覧ください。
2 種類株式発行の流れ
種類株式を発行するためには、以下の2つの手続きを踏む必要があります。
- 定款変更の手続き
- 発行の手続き
3 定款変更の手続き
種類株式を発行する際には、定款を変更する必要があります。
具体的には、定款により種類株式を発行できる会社に変更する必要があるのです。
定款を変更する手続きは、以下のような流れで進めることになります。
- 取締役会による必要事項の決定
- 株主総会招集通知の発送
- 株主総会による特別決議
- 登記申請
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(1)取締役会による必要事項の決定
取締役会により、株主総会を招集する旨、議案(株式の内容=優先株式)を決定することが必要です。
ここでいう「取締役会による決定」は、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数の賛成によることが必要です。
(2)株主総会招集通知の発送
各株主に株主総会招集通知を発送します。
株主総会招集通知には、たとえば、以下のような事項を記載することが必要です。
- 日時と場所
- 株主総会の目的となる事項
- 出席しない株主が書面などによって議決権を行使することが可能な場合は、その旨
優先株式を発行するための定款変更であれば、「株主総会の目的となる事項」には「種類株式発行のための定款変更の件」などと記載することになります。
(3)株主総会による特別決議
定款の変更について、株主総会の特別決議を経る必要があります。
ここでいう「特別決議」とは、総株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成により決議することをいいます。
(4)登記申請
定款変更の内容を登記に反映させる必要があるため、その旨の登記申請を行います。
以上の手続きを終えると、事業者は、優先株式を発行することが可能な状態になります。
4 発行の手続き
所定の手続きを踏んで定款を変更したら、実際に優先株式を発行することになります。
発行手続きの流れは、基本的に新株を発行するときの手続と同様です。
具体的には、以下のような流れで進めることになります。
- 株式の引受けの申込みをしようとする者への通知
- 割当の決定とその通知
- 払込み
- 登記申請
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(1)株式の引受けの申込みをしようとする者への通知
事業者は、株式の引受けの申込みをしようとする者に対し、一定の事項を通知する必要があります。
具体的には、以下のような事項です。
- 株式会社の商号
- 募集事項
- 金銭の払込みをすべきときは、払込みの取扱いの場所
(2)割当の決定とその通知
事業者は、申込者の中から優先株式の割当てを受ける者、その者に割り当てる優先株式の数を定めなければなりません。
そのうえで、優先株式の割当てを受ける者に対し、払込期日の前日までに割り当てる優先株式の数を通知する必要があります。
(3)払込み
優先株式の割当てを受けた者は、払込期日までに出資を履行することになります。
なお、払込期日までに出資が履行されなかった場合、割当てを受けた者は、出資を履行することにより優先株式の株主となる権利を失います。
(4)登記申請
優先株式として新株発行したことを登記に反映する必要があるため、その旨の変更登記申請を行います。
以上のように、種類株式(優先株式)を発行する場合には、新株発行の手続きだけでなく、そのための定款変更の手続きも行わなければなりません。
また、いずれの手続きにおいても、登記手続きが必要となるため、注意が必要です。
5 まとめ
今回見てきたように、優先株式を発行する場合の手続きは二段構えとなっています。
各手続きには、株主総会による決議や申込者に対する通知など、従わなければならないルールが存在します。
事業者は、株式発行手続きの流れを正確に理解したうえで、適切に資金調達を実施することが大切です。
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