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購入型クラウドファンディングを規制する2つの法律を弁護士が解説!

はじめに

近年、購入型クラウドファンディングの市場規模は増加傾向にあります。

実行する事業者は、自社のアイディア・商品などを元に資金調達できるだけでなく、そのアイディア・商品などに社会性や事業性があるかどうかを確認することができます。

もっとも、購入型クラウドファンディングを実施するにあたっては、あらかじめ理解しておくべき法規制がいくつかあります。
法規制によっては、罰則も設けられているため注意が必要です。

今回は、購入型クラウドファンディングを実施する場合の法規制を中心に弁護士がわかりやすく解説します。

1 クラウドファンディングとは

クラウドファンディング」とは、インターネット上で公開したプロジェクトなどに対して投資や寄付を募る仕組みのことをいいます。

プロジェクトなどに支援金を提供した場合、その支援者にはリターンとして、プロジェクトに関連する商品やサービスなどが提供されます。

クラウドファンディングは、リターンの形態により「寄付型」、「購入型」、そして、「金融型」の3つに分類されています。

今回は、このうち「購入型」にフォーカスして見ていきたいと思います。

2 購入型クラウドファンディングの実施方法

購入型クラウドファンディング」では、購入者から集めたお金を元手に製品の開発などを行い、完成した製品など(金銭以外のもの)をリターンとして購入者に提供します。

実施方法としては、以下の2つの方法があります。

(1)All or Nothing方式

All or Nothing方式」とは、プロジェクトが期間内に目標金額に達した場合のみ、実行者が支援金を得ることができる方式です。

この場合、実行者は必ずプロジェクトを実施しなければなりません。

これに対し、目標金額に達しなかった場合は、実行者は支援金を得ることができず、集まった支援金は支援者に返金されます。

(2)All in方式

All in方式」とは、プロジェクトが期間内に目標金額に達さなくとも、支援金を得ることができる方式です。

この場合、実行者は得られた支援金の額に関係なく、必ずプロジェクトを実施しなければなりません。

3 購入型クラファンを実施する際に注意すべき法規制

購入型クラウドファンディングを直接規制する法律はありませんが、以下の2つの法規制に注意する必要があります。

(1)景品表示法(景表法)

景品表示法(景表法)」とは、商品・サービスなどに付随して提供される「景品類」や商品・サービスなどに付される「表示」などを主に規制する法律です。

購入型クラウドファンディングとの関係で注意しなければならないのは、このうちの「表示規制」です。

景表法は、以下の2つの表示を「不当表示」として規制しています。

①優良誤認表示

優良誤認表示」とは、商品・サービスの品質や規格などについて、実際のものよりも著しく優良であると示す表示のことをいいます。

購入型クラウドファンディングでは、支援者へのリターンが予定されていますが、リターンとして提供する商品やサービスなどに付される表示が、優良誤認表示とならないよう注意する必要があります。

なお、優良誤認表示にあたるかどうかを判断するために必要があると認めるときは、消費者庁は事業者に表示の裏付けとなる合理的な根拠を示す資料の提出を求めることができるとされています(不実証広告規制)。

この場合、事業者が資料を提出しなかったり、提出資料が表示の裏付けとなる合理的な根拠を示すものと認められない場合は、不当表示とみなされます。

②有利誤認表示

有利誤認表示」とは、商品・サービスの取引条件(価格など)について、実際のものよりも著しく有利であると消費者に誤認されるような表示のことをいいます。

この点も、優良誤認表示の場合と同様、リターンとして支援者に提供する商品・サービスなどに付される表示が、有利誤認表示とならないよう注意することが必要です。


このほかにも、以下の6つの表示は、内閣総理大臣により「不当表示」として指定されています。

  • 無果汁の清涼飲料水等についての表示
  • 商品の原産国に関する不当表示
  • おとり広告に関する表示
  • 消費者信用の融資費用に関する不当表示
  • 不動産のおとり広告に関する表示
  • 有料老人ホームに関する不当表示


※「不当表示」について詳しく知りたい方は、「「誇大広告」とは?押さえておくべき4つの法律と罰則を分野別に解説」をご覧ください。

(2)特定商取引法

特定商取引法」とは、消費者の利益を守るために、事業者による違法・悪質な勧誘行為などを規制する法律です。

具体的には、訪問販売や通信販売などのように、消費者トラブルを生じやすい取引類型を規制対象としており、購入型クラウドファンディングは特定商取引法が規制する「通信販売」にあたります。

景表法上の規制と重なる部分もありますが、通信販売を行う事業者には以下のような規制が課されます。

①広告に関する表示義務

事業者は、通信販売に係る商品などについて広告をする場合、自社の情報や商品・サービスの取引条件(価格や支払時期、引渡時期など)を表示しなければなりません。

そうすることで、取引条件等に関する消費者とのトラブルを防ぐことができます。

②誇大広告等の禁止

事業者は、通信販売に係る商品などについて広告をするときは、著しく事実と異なる表示をしたり、実際のものよりも著しく優良・有利であると誤認させるような表示をしてはなりません。

これに違反した場合、行政処分や刑事罰の対象となるため、注意が必要です。

4 まとめ

購入型クラウドファンディングは、自社の新商品やサービスなどをPRできるとともに、それらが通用するかどうかを事前に確認することができます。

その意味では、事業者にとっては、魅力的な資金調達方法の一つであるといえます。

もっとも、購入型クラウドファンディングを実施するにあたっては、遵守すべき法規制があるため、それらをしっかりと理解したうえで実施する必要があります。

弊所は、ビジネスモデルのブラッシュアップから法規制に関するリーガルチェック、利用規約等の作成等にも対応しております。
弊所サービスの詳細や見積もり等についてご不明点がありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。


なお、記事の内容は投稿時の法令・制度に基づいており、投稿後に法改正等がなされている可能性があります。
記事をご参考にされる際は、必ずご自身の責任において最新情報をご確認下さい。

   

勝部 泰之 (Yasuyuki Katsube)

                     

弁護士(35487 / 東京弁護士会)。証券会社勤務時代に携わったシステム開発案件を中心に、決済、暗号資産、特許関連法務を多く手掛ける。また、エンジェル投資家としてスタートアップ企業の成長を多角的にサポートする活動も行う。 George Washington University Law School (LL.M.・知財専攻) 卒業(2016)。経済産業省 中小企業庁主催 適正取引講習会 「下請法(実践編)」講師(2024)

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